稲城市は東京都の郊外に位置し、梨の産地として豊かな自然が残る住みやすい街です。全国的にも珍しい人口が増加傾向にある街でありながら、多摩川や里山、梨・ぶどう畑、牧場などの自然環境を活かした学習がこれまでも各学校で取り組まれています。また、そうした学習過程では地域住民の協力を得ながらの教育が充実しています。現在までに全小・中学校がユネスコスクールへの登録申請を済ませており、第二次稲城市環境基本計画にもESDが位置づけられた現在、今後はさらにESDの視点から各学校の教育内容の充実や指導方法の改善などが行われることや、地域住民や企業、大学やNPOなどの学校教育への参加や参画が、これまで以上に求められています。
全校で面として進めるESDは、社会的・国際的な課題を横断的に取扱う問題解決的な未来志向の学習であり、学校外の教育力を積極的に内包化する必要性があり、上記の役割を担うコーディネーターの育成と参画が目下の課題となっています。
【実施期間】 2012年6月~2013年2月(全8回)
【場 所】 市内の学校等
【参加者】 市内教員 20名 市民 3名
【講 師】 森良氏(ESD-J理事、エコ・コミュニケーションセンター代表)
田村学氏 (国立教育政策研究所 教科調査官)
【主 催】 稲城市教育委員会
学校がESDコーディネーターに求める資質・能力は、ESDの知識、地域社会の情報掌握、人材・教材へのアクセス、学校と教育課程の理解、ファシリテーションスキルの5つです。
ESDのコーディネーター育成については、私の前任地である多摩市での経験を踏まえてESD-Jと連携を図りながら、ECOMの森良氏を通年の講師として招へいして、OJT型の研修会を全8回実施しています。現在は学校へのESDの浸透を中心に据えていますが、地域住民をはじめ関係者には研修をオープンにしており、誰でも参加できます。教員と役所の環境担当者・地域住民・保護者などが一緒に研修に参加しながらESDの指導計画の作成を進めており、コーディネーター育成の側面も含んでいます。
その過程では、閉じた中では得られないアイディアや解決方法が生み出され、最終的には児童・生徒にとっても魅力のあるESDの学習が生み出されることが期待されています。一時的な授業の支援者としてではなく、企画やその評価にもコーディネーターが携わることが必要だと考えています。また、教育課程や学校や教員のもつ文化などへの理解促進や学校組織との課題の共有、人間関係の構築や促進なども研修の意味としては、重要なものと考えて位置付ける必要を感じており、今後も充実させたいと考えています。
<報告者プロフィール>
千葉 正法(ちば まさのり)
東京都世田谷区、杉並区で公立中学校国語科教員として勤務の後、八王子市教育委員会指導主事、多摩市教育委員会統括指導主事、同参事を経て、現在は稲城市教育委員会参事・指導室長。幼少から晴釣雨読の生活を送り、現在は「2050年の大人づくり」をテーマとして、国語科教育とESDの側面から学校教育を支援している。