北九州市ESDコーディネーター育成講座「ESD未来創造セミナー」

北九州市ESDコーディネーター育成講座「ESD未来創造セミナー」
 ~市民センター館長・社会教育主事等を中心に~

1. ESD 未来創造セミナー開講のきっかけ

北九州ESD 協議会は、北九州地域でのESD 活動を推進するため、市民の呼びかけによって平成18 年に市民団体、企業、学校、行政等44 団体で設立されました(現在75 団体)。NPO法人北九州サスティナビリティ研究所もその構成団体で、ESDの支援を活動の一つにしています。
北九州市はこれまで、公害を始めとするさまざまな環境問題を克服してきました。現在も地域や都市の中で人が輝く、賑わい・安らぎ・活力のあるまちを目指して多様な環境の取組みを進めており、平成23 年には国から「環境未来都市」に選定されました。
これらの取組みの原動力となるのが、市民の環境力です。「環境未来都市」の基盤となる持続可能な社会づくりのためには、知識の習得にとどまらず、それを活用して自ら考え、判断し、行動するとともに、知識や理解した内容を周囲の人々に伝え、社会を動かすことのできる人材を育成する必要があります。
北九州ESD 協議会では、設立当初から毎年、会員を対象に、ファシリテーター研修講座を行ってきましたが、十分実践につながったとは言い難い状態でした。そのような中北九州市は環境未来都市構想が掲げる目標に積極的に取り組むため、市民活動団体の発想や専門性等を活かした提案を市と協働で実施する事業を開始しました。当法人はESD 活動を担う人材育成研修を市と協働で行うことが、北九州全域にESD 活動の普及に極めて有効であるとの主旨を提案し、その重要性が認められ採択・開講の運びとなりました。

2. セミナーのねらい

九州市には、小学校区毎に設置されている市民センターを始めとして市民活動を支援する施設が多くあり、すでに地域の特徴を活かしながら環境や社会を良くするためのさまざまな学習や実践活動が行われています。一方近年、地域の課題はさまざまな問題が複雑に絡み合っており、少人数で取り組んでも解決が困難なことが多く、地域としても新しい切り口を探求していると言えます。
そのため、環境のみならず、人権、ジェンダー、福祉、貧困削減、多文化共生など多様なテーマに取り組んでいる地域の関係者の分野横断的な協働を生み出す視点とそのための技量をエンパワーし、課題解決のための行動変容と社会変革に向けた思いと力を引き出し、それを形にする視点と力を身に付けるESDコーディネーターの育成が必要と考えました。
そこで、このセミナーでは、すでに地域の実情に知見があり、リーダーシップやマネジメントの経験を持ち、後に広がりを持つことができる市民センター館長、社会教育主事・主事補、環境学習施設の職員等を対象としました。

3. セミナーカリキュラムの内容と特色

カリキュラムづくりにおいては、効果的かつ有意義なものになるよう、保育所や大学、生涯学習等各世代にわたる教育関係者や行政からなる作成委員会を設置し、幅広い視点かつ専門的な意見をいただきました。さらに、ESD-J に講師について助言をいただき、下表のとおりカリキュラムをまとめました。

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また、セミナーに参加していただきやすいように、事前学習として市民センター館長全員(7 区に129 名)に、ESD の説明やこれまでの活動等の紹介を行いました。
セミナーの目標は、ワークショップやフィールドワークを中心に「自ら課題を見つけ出す力」と「地域における課題解決に向けた企画力」を身につけることです。
セミナーⅠではESDの基礎知識・事例を学んだ後、班にわかれてフィールドワークを行い、意見を出しながら全員でマップを作成しました。

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テーマは「人と自然との関わり」と「時代の流れ」。セミナーⅡでは、セミナーⅠ終了後の宿題(参加者自身の地域における課題とその解決プログラムをマップに落とす)を全員が発表。さらに企画書づくりの具体的な方法を学び、各自が企画書作成に挑戦。その成果品の中からフォローアップ会合で発表する企画書を参加者全員がコンペ形式で選びました。

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4. セミナーの成果

当初見込んだ定員(30 名程度)を上回る45 名もの応募があり、本セミナーの受講による社会・地域への貢献に向けた期待度・関心度の高さが伺えました。
講座終了後、参加者からは、ESD は「地域を見直す切り口」、「地域課題解決に向けた糸口」になったという声を多く聞くことができました。さらに、気付き・課題を多面から見ることの大切さや多分野にわたる多くの人が関わり学びあう楽しさを味わい、今後のまちづくり活動において重要な視点としてESDを加えたい(+ ESD)という意見も多くありました。
フォローアップ会合においても、一般参加者から次回のセミナーにぜひ参加したいとの声もあったほか、「これからのまちづくり」のテーマにもとづく全員参加型のパネルディスカッションは反響が大きく、地域のために何かしたいという参加者の前向きな気持ちと熱意に心強さを感じました
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5. 今後の課題

ESD コーディネーターは、まさに持続可能な未来を創造する人であり、そのような人々がこのセミナーをきっかけに誕生することを願って、「ESD 未来創造セミナー」と命名しました。
今回のセミナーを終え、ESD 活動の普及を図るためには、今後もこのESD コーディネーター研修を継続し、つなぎ・まとめ役たる人材育成に力を入れていく必要があると実感しています。さらに、今回のセミナーの受講生のフォローを丁寧に行うことが、次なるESD 普及の決め手であり、これからの課題です。
セミナーを受講した人びとが核となり、「北九州100 万人市民がESD 活動を実践!」につながっていくことを目指し、進んでいきたいと考えています。

<報告者団体プロフィール>
北九州サスティナビリティ研究所
市民、団体、企業、行政のネットワークに基づく持続可能(サスティナブル)な社会システムの構築、地域活性化への寄与を目的に2006年設立。キーワードは、法人名のとおり「サスティナビリティ」。SDに関わる研究・教育活動を実施し、国際業務を受託するなど、北九州ESD協議会の活動も支援。

カテゴリー: お知らせ, コーディネーター養成講座, 地域の事例

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