2021年度より日本の持続可能な開発のための教育推進会議(ESD-J)と台湾の中華民国環境教育学会(CSEE)との交流活動は継続して行われて来た。2024年は、5月29日から6月4日にかけてCSEEから「縣市環境教育人員(環教大使)国際交流学習」と称し、27名の教員等が来日した。ESD-Jは、彼らの訪日が充実したものとなるよう支援を行った。
日本・台湾 小中学校ESD/環境教育シンポジウム
🟩日時:2024年6月1日(土)14:00~18:20
🟩会場:学習院大学南3号館1階103教室
🟩主催者:(特定非営利活動法人)持続可能な開発のための教育推進会議(ESD-J)
(一般社団法人)日本環境教育学会
🟩参加者:台湾の教育関係者27名、日本の参加者 32名 合計59名
🟩目的:台湾、日本のESD・環境教育関係者が両国におけるESD推進に関する経験を共有する。学校教育、社会教育・生涯学習双方を対象とする。また、世界的に重要なテーマになっている気候変動教育についての情報を共有する。
予想を上回る総勢59名の参加者が各地から集まり、開始直後から参加者の熱気が伝わってきた。
🟩1🟩 開会行事: 司会 鈴木 克徳氏(ESD-J共同代表理事)
🕑14:00~ 開会挨拶
・主催者を代表して、小玉 敏也ESD-J共同代表理事から、今回の台湾教育関係者の訪問の趣旨、訪日に至る経緯、シンポジウムの概要、支援者へのお礼を述べた。
🕝14:20〜 『日本環境教育学会におけるESD・環境教育に関する研究』
・福井 智紀氏(日本環境教育学会研究委員長)から、シンポジウムの趣旨と第一部の講演内容と講師の紹介があった。本シンポジウムは、同学会の3つの研究委員会の成果発表も兼ねており、ESDに関して、教育評価、SDGsの教育、気候変動教育の観点から報告があるとの説明があった。
🟩2🟩 第一部:日本のESD・環境教育の経験共有 司会 福井 智紀氏(日本環境教育学会研究委員長)
🕝14:30~ 『日本の学校教育におけるESD実践事例』
・棚橋 乾氏(全国小中学校環境教育研究会顧問)。同学会「環境教育プログラムの評価」研究会の代表としての講演であった。同氏は、学習指導要領と探究的学習の特徴を説明し、宮城県の小学校と東京都の中学校の事例を引用しながら、日本のESDの優良事例を紹介した。近年のESDの特徴は、児童生徒が地域で「参加・行動」を起こす事例、行政機関や団体に提言する事例が多いとの報告があった。
🕒15:00~ 『日本の社会教育におけるESD〜市民による学びの事例から』
・二ノ宮リム さち氏(立教大学教授)。同学会「SDGsの教育」研究会の代表としての講演であった。同氏は、市民が社会の諸課題(人権・共生・環境等)を解決していく上で、ESDが重要な役割を担うことを指摘し、岡山市の公民館を拠点とした行政・企業・学校が連携したESDの事例、東京都板橋区の市民学習推進センター、東京都昭島市のあきしま市民会議の事例を紹介しながら、社会教育において住民が主体的な学習を切り拓く重要性を述べた。
🕞15:30~ 『ライフスタイル・消費行動から考える学校での気候変動教育』
・小林 知子氏(公益財団法人消費者教育支援センター主任研究員)。同学会「気候変動教育」研究会の代表としての講演であった。同氏は、気候変動問題に「消費者市民」の立場からアプローチする授業プログラムの開発に関する報告をした。そこでは、大学教員と小中高の教員が共同開発したプログラムを、ある小学4年生の教室で試行した事例が紹介された。その授業は、気候変動問題に関して、①「問い」を立てる、②調べる、③思考ツールを使って整理する、④決めた行動を実行する、⑤考えを伝え合う、という学習を経て、児童の関心と意欲を高めていった。他校にも応用できるプログラムであった。
第二部:台湾のNEEDの経験共有 司会 萩原 豪氏(日本環境教育学会国際交流委員)
🕟16:35~ 『新世代環境教育發展政策推動現況與精進創新』
・許 毅璿氏(中華民国環境教育学会理事)が、台湾で推進するNEED(New-Generation Environmental Education)について、①NEED推進の背景、②NEED推進の枠組みと実行戦略、③NEEDの現状と未来展望の3点について講演した。NEEDは、教育部、地方の環境教育組織、学会、学校が一体となって推進され、関連政策の策定、教員研修、教材開発、国際交流等の方策によって、台湾社会に浸透していっているとの報告があった。
🕔17:00~ 『新世代環境教育を戦略とする学校統治−SDGs持続可能な未来学校計画』(和訳)
・林 俊傑氏(廉使國民小學校長)
🕠17:20〜 『培養學童環境教育行動和影響力』
・施 皇羽氏(彰化縣同安國小學校長)
🕠17:40〜 『緑の博覧会』
・唐 欣怡氏(宜蘭県政府学校環境教育センター)
訪問団の代表として、林氏と施氏は小学校での行政・企業・民間団体等が連携・協働したNEEDの取組を紹介し、いずれも学校全体の活性化、児童生徒の学力・リテラシー、教員の力量形成、地域力の向上につながっていると報告した。唐氏は、社会教育施設を拠点とした地域ぐるみの環境教育の取り組みを報告した。特に、例年開催される「緑の博覧会」は、地域の困難な課題を克服し、住民と共に持続可能な未来を切り拓く重要なイベントとして位置づいているとの報告があった。
閉会 司会 小玉 敏也(ESD-J共同代表理事)
🕕18:10~ 降旗 信一氏(日本環境教育学会会長)と阿部 治氏(ESD-J相談役)、許 毅璿氏(中華民国環境教育学会理事)から閉会の挨拶があり、本イベント開催の意義が確認された。
台湾環教大使訪日の全日程の詳しい報告はPDF(報告書)をご参照ください。