2021年度より日本の持続可能な開発のための教育推進会議(ESD-J)と台湾の中華民国環境教育学会(CSEE)との交流活動は継続して行われて来た。2024年は、5月29日から6月4日にかけてCSEEから「縣市環境教育人員(環教大使)国際交流学習」と称し、27名の教員等が来日した。ESD-Jは、彼らの訪日が充実したものとなるよう支援を行った。
新渡戸文化高等学校の視察
午前10時に高校に到着し、まず新渡戸文化中学校・高等学校の小倉 良之校長から「新渡戸文化中学校・高等学校教育デザイン」についてご説明頂いた。具体的には、学校の設立の経緯、学校のコンセプト、これまでの台湾との接点、先進的な探究学習のあり方等について説明された。特に日本初の「余白のある時間割」について、生徒が自身の興味関心に基づいて独自にプロジェクトをデザインし、社会課題の解決に対するアクションを考え、実施する探究学習の実践例や斬新な修学旅行(「旅する学校」)について紹介して頂いた。「学びの成果は、テストでなく社会に表現することで確認する」という考えに基づき、社会と繋がる行動者の育成を目指している点に関し、参加者から強い共感が示された。大学受験のシステムの変化に基づき、中学・高等学校における学びの在り方や、伸ばすべき力は自ずと変わっており、大学に入ってから、またその後の社会人としても活躍できる人材を見据えて授業をデザインする柔軟な学びの在り方についても参加者からは大きな感銘を受けたとの発言がなされた。
次に、中学生、高校生の通常授業を自由に見学させてもらい、生徒と「何を学ぶ授業か」「授業のどんなところが楽しいか」等の質疑を行った。また、廊下に展示されていた数多くの成果物を注意深く観察した。
その後は、新渡戸文化学園内にあるクリエイティブラーニングスペース「VIVISTOP NITOBE」を見学し、VIVITAチーフクルーの山内 佑輔氏から「VIVISTOP」の3つの役割をご紹介頂いた。山内チーフクルーは、大学職員、公立小学校の図工専科教員を経て、2020年4月に新渡戸文化学園へ着任、(特非)VIVITA JAPANと連携しVIVISTOP NITOBEを開設した。この場所は、「教えない・一緒に作る」姿勢を貫き、子どもの主体性や創造性を育む場所で①同学園の小学校から高校の様々な授業で活用、②休み時間や放課後に子どもたちが自由に使う、そして③地域の人(会員)へ開放し、学生と地域の人々が世代を超えて交流し、学び合う場として機能しているとの説明がされた。参加者からは、同学園と「VIVISTOP」の連携の在り方や導入方法についての質問がされた。
最後に短時間であったが、全体に関する質疑応答がなされた。「同学園の教員は皆、山内先生のように独創的・革新的なのか」、「どのようにそのような魅力的な教員を集めているのか」、「同学園の学費について」、「同学園での学びは実際に大学受験に活かされているのか」など、時間が足りなくなるほど多くの質問がされ、参加者の関心の高さが伺えた。
台湾環教大使訪日の全日程の詳しい報告はPDF(報告書)をご参照ください。