2021年度より日本の持続可能な開発のための教育推進会議(ESD-J)と台湾の中華民国環境教育学会(CSEE)との交流活動は継続して行われて来た。2024年は、5月29日から6月4日にかけてCSEEから「縣市環境教育人員(環教大使)国際交流学習」と称し、27名の教員等が来日した。ESD-Jは、彼らの訪日が充実したものとなるよう支援を行った。
多摩市立和田中学校
5月29日は2009年より全小中学校がユネスコスクールに加盟し、各校が独自のESDを推進してきた実績のある東京都多摩市を訪問した。
13時30分頃に多摩市立和田中学校に到着し、すぐに控室(図書室)に移動した。学校長からの歓迎の言葉に続いて、当日のスケジュールについて簡単な説明があり、14時頃から校内の授業見学を行った。授業の内容は、1年生は、学年全体で総合「雑巾プロジェクト」の授業を(株式会社)CUREグループを講師に迎えて実施していた。2年生は総合「進路学習:職業と未来の自分」、3年生は総合「進路学習:進路開拓に向けて」を各教室で実施していた。訪問団の方々は生徒に話しかけたり、授業風景を写真におさめたり、同校の教員に質問したりと、熱心に参観されていた。
見学後の14時40分から、控室(図書室)で2部構成の全体会を行った。第1部は、多摩市教育委員会による講演、第2部は和田中学校による講演である。なお会場には、同校関係者に加えて多摩市教育委員会教育長の千葉 正法氏と多摩市校長会会長の多摩市立愛宕中学校校長 竹田 和彦氏も参加されて、冒頭に歓迎のご挨拶をいただいた。
第1部は、多摩市教育委員会教育部教育指導課の池田 豊一指導主事より、『多摩市の進めるESD』との題でご講演をいただいた。そこでは、多摩市のESDの歩み(2009~現在)、「2050年の大人づくり」という理念、各校のESDの概要が説明された。同市が重視するのは、①小中が連携したESDの推進、②SDGsを踏まえたESDの推進、③「多摩市子どもみらい会議」の充実の3点であり、とりわけ③が同市のESDの大きな特徴であると言える。これは、1年に1度、各校の児童生徒が集まって開催されるもので、前半は各校の成果発表、後半は代表間で議論して市政への提言をまとめるというものである。
第2部は、多摩市立和田中学校の金城綾香教諭より、『和田中学校のESD』という題でご講演をいただいた。そこでは、教育目標「自立と共生」とSDGsとの関連、職場体験や環境学習「雑巾プロジェクト」の概要が説明された。同校は、一時低迷していたESDを、今回の訪問を機に再活性化するとのことである。なお同教諭の講演は、英語教諭でありながら流暢な中国語で行い、訪問団から非常に理解しやすいと賞賛の拍手を得ていた。
2つの講演に関する質疑応答を行った後、同校の生徒会役員3名が入室し、セレモニーが行われた。生徒会では、訪問団の来校に合わせて4月3日に発生した台湾の大規模地震へのお見舞い金を集めてきたということで、生徒会長が手渡すことになっていたのである。会長のスピーチの後、最も被害の大きかった花蓮県の学校長がその募金を受け取った。これには、訪問団の方々全員が大いに感激されていた。
この後、わずかな時間で、生徒の授業と清掃活動の様子を見学し、同校の視察を予定通り終了した。最後に玄関先で集合写真を撮って、訪問団は宿泊先に帰った。
※なお、連光寺小学校及び和田中学校の訪問は、東京都多摩地域の情報誌『タウンニュース』(2024年6月20日公開)でも詳しく紹介された。
台湾環教大使訪日の全日程の詳しい報告はPDF(報告書)をご参照ください。