ESD-Jの活動を支援してくださっている会員企業に順にインタビューをしていく企画をスタートします。第1回は、日能研の高木幹夫代表です。年度初めの多忙な折、スケジュールを何とか割いて頂き、新横浜にある日能研本社ビルの「木の応接室」を訪問しました。DESD(*1)を経て、SDGs(*2)達成に向けたESDのアプローチの在り方と、日能研が育みたい生徒像についてお話し頂きました。
(1)SDGs目標に向けたESDのアプローチ
日本のDESDは、ESD活動の結果を成果として評価してしまったために、多くの活動事例は生まれましたが、本来ESDが取り組むべき「人づくりのプロセス」は、あまりハイライトされませんでした。改めて言うまでもなく、ESDは教育であり、そのもっとも重要なエッセンスは、起こった現象(結果)ではなく、人づくりのプロセスにある。
近年のアメリカの教育現場は、プロセスを評価する形成的評価(Formative Assessment)へ移行してきている。そうしなくてはならない状況へと社会も変化している。ところが、日本の教育の世界では、受験システムにしても、相変わらず素点・得点が主流を占めている。
バブル以降、どんなに頑張っても前年比マイナスの中で頑張る社員を評価するしかない現実と向き合わされた企業は、結果による評価ではなく、プロセス評価へ視点を移行する機会を得た。しかし、学校社会は、そういった洗礼を受けないままに、現在を迎えていることが起因している。
2014年にDESDが終わり、国連SDGsの波がやってきた。学校も企業も、目新しい頃はSDGsの取り組み番号を掲げて満足していた。実際にはどのゴールも容易に達成できるものはなく、様々な課題が複合的に絡んでいて、ホリスティックなアプローチからしか未来を切り開く道がないことに気づき始めている。
(2)活動の中心にいる子供を育てる
日能研の強みは、いつでも方針を変更したいときに、変えることができる身軽さと、それに応えるスタッフの存在にある。それは、学習塾でありながら、単に望む学校に入学できる学力をつけるに留まらず、ESDの視点をもち続けているという自負がある。
日能研の卒業生たちが進学した先の学校において、勉強でトップクラスにいたら、それはそれで嬉しいと思う。けれども、それよりも生徒会活動や部活動等の学校生活の中心にいて活躍する子でいてほしい。そういう子ども達を育み続けることが、何よりも喜びと感じる。
高木幹夫 プロフィール
日能研 代表取締役、日本の実業家。日本教育カウンセラー協会認定教育カウンセラー、MFA(Medic First Aid)インストラクター、
UCLAファウンデーション理事。
著書:『問題は、解いてはいけない。』(サンマーク出版)、『予習という病』(日能研共著)(講談社現代新書)他